概略
12月30日に旧笠井邸で行われる運びとなった「私達展」。楓,かおる,のりえ,麻音で一生懸命に考えて頑張ったようですが、近づいてくるドキドキが止まらない楓。みんなでチラシ配りとポスター張りもしていますが、そこに堂郷が・・・。堂郷の思い遣りなのか嫌がらせなのか分からない行動に苦笑いの楓たちなのでした。






開始直後の11時に最初のお客様として現れたのが、こまちと思いきや飛び入り参加の打診。それを快く受け入れる楓と香ですが、写真がのりえの表情豊かなものばかりで・・・。そんなときに最初のお客様が来るのでした。それはももねこ様で、香の勇者の肉球を見て満足して帰ります。それと入れ替わりで入ってきたのが、楓の母と祖母の2人。その後は、賑わいを見せる私達展で、ちもやりほやさよみやマエストロ、堂郷まで来てくれます。


朗読劇「たけのこの妖精ノコちゃんのキケンな冒険」では、朗読者の麻音だけでなく、場を盛り上げる楓,かおる,のりえ,こまちの姿が。そして、最後にはノコちゃん役として香が出てくるのでした。ただ、客を引き付けることを忘れない麻音の策略で第2部もあるということですが・・・。かおるものりえも香&こまちの実演や提供、展示も大盛況な中、楓はりほと一緒に自分の展示している写真を見ています。私達展に来る人のことを考えて写真を展示しようとしたが、自分の見せたい写真になってしまい、りほに見せるのが恥ずかしいと言う楓。それに対して、今回の経験でとてもも大切なことを掴んだはずだと優しく伝えます。そして、私達展も終わりが近づいていくのでした。

私達展が終了して、撤収作業も終わった旧笠井邸。終わったことの達成感と疲労感にまどろむ楓,かおる,のりえ,麻音。そんなときに私達展のアンケートを読み始める一同なのでした。それぞれの想いの詰まった文字の羅列を静かに読んでいきますが、その中には、かおるの父やさよみ、楓の祖母からまで来ていました。やってよかったと心底思う楓たちなのでした。





12月31日の西方寺での除夜の鐘を突いて年越しし、八幡神社で参拝している楓,かおる,のりえ,麻音ですが、そんなときにちひろから電話が。どうやら友達が出来たようで、明日一緒に初詣で行くようです。その後、「カフェ
たまゆら」で休んでいる一同ですが、午前5時にさよみから恐怖の一斉メールが・・・。初日の出を見に朝日山に行くことがプレゼントのようですが、途中で路肩に車輪を脱輪してしまい・・・。レスキューを待っているときに初日の出を迎えてしまう楓たちですが、偶然の奇跡の光景を見つけます。


その写真を撮りたいと急ぐ楓ですが、祖母の言葉によってカメラのファインダーからの光景が自分の見つけた宝物なんだと気付きます。そして、父の写真は彼の見つけた宝物なのだと分かるのでした。その後は、竹原のみなさんの優しい心遣いに助けられて、レスキューを待つ楓たちなのでした。
掘り下げポイント・楓が掴んだ奇跡 今回は、楓の集大成として物語が終わりましたが、やはり父がどうして写真を撮っていたのかを知れたのは大きいかもしれませんね。最初は写真は父との思い出でもネガティブな記憶しかなかった存在でしたが、アグレッシブになって、父との思い出の場所である竹原に引っ越したことで、徐々に変わっていく姿が印象的でした。
楓にとって、写真とは父の思いを見せてくれる大切なもの。それでいて、その目的のための手段である写真を撮ることに夢中になっていく姿は非常に微笑ましいものでした。カメラのファインダーから見た景色には、「
たまゆら」が写り込むということですが、それは果たしてどんなものだったのかは詳細には語られませんでしたが、楓の才能の片鱗を見せているということを考えると十分かもしれません。
写真を撮ることの好きな楓ですが、得意な写真は相手の心の動きを鮮明に写すことのできる才能は第12話でもよく描かれていました。OVAでも描かれてはいるものの、インパクトがあったのはこまち,ちひろ,志麻子のストーリーだったと思います。それぞれ恋心,友情,失恋ととても心の動きが中心に描かれていましたが、それに対する楓のリアクションはとても素直でありながら、見つけることが難しい視点でしたね。
そんな心の動きを敏感に感じられるのは、やはり視覚が優れていることもあると思います。素直にビジュアルを捉えるのが楓ですが、それが非常に絶妙でそれでいて綺麗に心の動きを感じ取れる。だからこそ、良い写真を撮れる、そんな感じがします。りほはそんな楓に刺激を受けて、空の写真をまた撮ることにしたということが第12話の私達展の写真の1枚から窺えましたが、それを撮った楓は本当に才能に気付かないだけで、すぐに見つけてしまうかもしれませんね。
楓はかおるによって迎えられ、のりえと麻音に刺激を受け、りほという憧れの存在がいる。それだけではなく、楓の母や祖母,ちも,堂郷,さよみ,マエストロなどのたくさんの人々からの心の動きや美しいものをみることで、成長している。最初はあんなにネガティブだった女の子が1年足らずで、ここまで変わることが出来るってホントに素敵なことだと思いますね。
・変わっていく仲間たち 楓に影響を与えた友人たちですが、一方で彼女らもたくさんのものから影響されて変わっていっています。それは高校時代であれば特に顕著なものになると思いますが、それぞれの気持ちを簡単に見ていくことにします。順番は、かおる,のりえ,麻音の順にしていこうと思います。
かおるは終始みんなのお姉さん的存在で、全てがしっかりしていると思われている感じでした。しかし、その内実は自分の夢の無さに苦しんでいたり、現実的な考え方のせいでネガティブになったりとやはり内心では不安を抱えていました。しかし、第10話の物語を通して、自分のしたいことを見つけ、前進したと思います。かおるにとってみんなの支えになることが自分の今の夢という感じ。しかし、それでいて不安を打開したかおるには無限の可能性が広がっている。そう自分には映りました。
のりえは所謂ムードメーカー的存在で、元気の良さでみんなを引っ張っているの印象的でした。のりえは成長したというよりは、今までの夢がしっかりと根付いたというのが本当でしょう。のりえの夢はパティシエになって、甘いものでみんなを幸せにすること。それは終始ぶれることがなく、このまま真っ直ぐに将来に突き進むと思います。どちらかというとみんなに与えた影響の方が大きいと思いますが、それを見つめているのりえの姿はどうも大人びて見えましたね。
麻音は引っ込み思案な子でしたが、終盤は自己主張をすることをするようになって一番3人の中では変わったキャラかもしれません。引っ込み思案なのに好奇心旺盛で何でもチャレンジしようとする気持ちが、いつしか朗読劇を人前でするようになるまで成長した。自己主張できなかったモヤモヤも徐々に楓たちとの出会いで、変わっていった姿はとても丁寧に描かれていたと思いますね。まだ、夢がたくさんあって決まっていないところもありますが、そこから夢を探す作業はとても有意義なものになっていくと思います。
かおるは序盤から終始あまり目立つことは少なかったのですが、匂いが好きということで嗅覚に関することは終始説明を補強する担っていました。そして、のりえは味覚を担当して、麻音が聴覚を担当する。これらがないとまた物足りない物語になっていたかもしれませんね。
・見守る街の人 楓たちに影響を与えたのは友達だけでなく、竹原に住んでいる人たちの存在も大きいでしょう。楓にとってはりほが中心にはなるものの、こまちやちも、みそのに影響を受けていますし、のりえにとっては楓の祖母に影響を受けている。麻音も乙女座の公演者や堂郷に影響を受けており、かおるも楓,のりえ,麻音が大きいとはいえ、さよみや父に影響を受けていると思われます。
色んな行き先に行った大人たちを見ることで、こうなりたいと憧れたり、苦しんでもこう考えればいいのだと思ったり、こういう道があるとも知れる。もちろん子どもたちから影響を受けることもあり、それも成長の助けになっているのかもしれません。楓たちのような将来ある人たちをみる街の人の存在もなくてはならない、そう思ったのが
感想です。
総評 OVA版からテレビ
アニメ版へと変化を見せた「
たまゆら~hitotose~」ですが、流石チーム「ARIA」の布陣で、繊細な心情描写や移りゆく風景などありふれているものではある中から、大切なものを探し出してくれる素敵な物語が多くありました。その一方で、楓たちのような感受性豊かな女子高校生を持ち出すことで、色々な影響を受けて成長する姿も同時に描いているのは素晴らしかったと思います。
ストーリーの安定感は抜群で、一方で作画もどうにか耐えた印象。キャスト陣は、志保美りほ役の葉月絵理乃さんや篠田こまち役の広橋涼さん、塙さよみ役の大原さやかさんと脇に「ARIA」のメンバーを配置し、世界観を盛り上げてくれました。一方で、メインキャストは比較的若手(あくまでも相対的に)を置き、今までの殻からは脱却している点も見られました。
大切なものは残し、それでいて変化を付ける。それがこの
アニメでは無事達成できたと思います。1クールで無駄のあったところは少なく、スマートにまとめた佐藤監督には感服しますね!!
終わりに 本当に素敵な作品を制作しまして、ありがとうございました!チーム「ARIA」の実力をとくと見れたアニメでした。ゆったりまったりした中で、しっかりとした成長が見られ幸せでした。また、素晴らしい作品をおつくりしていただければ嬉しい限りです!!
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